Innovation Dojo Japan は大阪府堺市と連携し、「堺×ウェリントン スタートアップ・クロスボーダーオンライン交流会」を開催しました。堺市、ニュージーランドの首都ウェリントンのスタートアップ支援機関 Creative HQ、そして両都市のスタートアップが参加し、姉妹都市という枠組みを生かして実証実験や事業連携へと発展させられるかを探る場となりました。
単なる情報交換にとどまらず、社会課題の現場で事業を進める創業者の声を起点に、具体的な協業の可能性を検討することが、この交流会の大きな目的でした。
両都市が描くイノベーションのかたち
堺市:地域と産業をつなぐエコシステム
関西に位置する堺市は、ものづくりの集積地として知られ、近年はインキュベーションやアクセラレーションを通じたスタートアップ支援を強化しています。産業の強みを地域課題の解決や新技術の社会実装につなげていく自治体主導の動きは、日本各地で広がりつつあります。
今回のセッションでは、地域コミュニティとの連携、次世代人材の育成、起業家への長期的な伴走支援、地域特性を生かした集積、継続的な協働といった要素からなる、堺市のエコシステムづくりが紹介されました。

ウェリントン:政策に近い都市の強み
一方、ニュージーランドの首都ウェリントンは、政策立案機関や公的組織が集まる都市です。この立地特性は、制度に関わる実証や長期的な取り組みを進める上での強みとして語られました。
Creative HQ は、地域のスタートアップ支援における役割とともに、
- Capability(人材と能力)
- Culture(挑戦を後押しする文化)
- Connectedness(出会いと連携)
- Capital(成長を支える資金)
という「4Cs」の枠組みを提示しました。さらに、ニュージーランド国内にとどまらず、オーストラリアやフィジー、パプアニューギニアでの活動にも触れ、堺市や関西地域との連携に期待が示されました。

重要な社会課題に向き合う両都市のスタートアップ
堺発 オーガイホールディングス株式会社
オーガイホールディングス株式会社の長縄拓哉氏は、3D スキャンと 3D プリンティングを活用した歯科サービスを紹介しました。災害時や医療インフラが限られる地域でも機能する移動型設備を備えたモデルです。
日本とニュージーランドはいずれも自然災害に直面する島国であり、地域医療という共通課題を抱えています。議論の中では、
- 災害に備えた高齢者施設でのデータ活用
- 日本で設計しニュージーランドで製造する分散型モデル
- 専門人材の交流
といった協業の可能性が挙げられました。

ウェリントン発 Volition
Volition の Erica Butters 氏は、障がいのある人が自らの意思や希望を記録し共有できるプラットフォームを紹介しました。
現場での経験から、
- 何度も説明を求められる状況
- 介護職の高い離職率
- 家族が紙の記録に頼らざるを得ない実情
といった課題が語られました。
Volition は、テキストや写真、音声、動画で情報を保存でき、共有範囲も利用者自身が決められる仕組みです。Creative HQ のアクセラレーターを修了し、プレシード資金を調達。現在はニュージーランド国内の複数機関と連携し、十二万人以上にリーチしながら、オーストラリアや高齢者ケア分野への展開を進めています。

パネルで浮かび上がった共通点と連携の可能性
弊社代表の Joshua Flannery が進行したパネルでは、政策と密接に結びついた社会課題にスタートアップがどう向き合うか、そして堺市とウェリントンが実証実験を軸にどのような協働が可能かが議論されました。
都市の違いを超えて共有された課題
パネルディスカッションを通じ、次の共通課題が浮かび上がりました。
- 社会課題が政治的な争点になりやすいこと
- 障がいのある人をめぐる根深い構造的な偏見
- 変革を遅らせる制度的な硬直性
- スタートアップだけでは動かしきれないシステムの存在
社会課題に取り組む起業家には、製品開発だけでなく、行政との対話や粘り強い働きかけが不可欠であるという現実も共有されました。
協働に向けた重要な視点
上記の課題に対し、次の三つの考え方が挙げられました:
- 人権を起点に考えること
尊厳や自己決定という観点から課題を捉えることで、地域を越えた普遍性が生まれる。 - 技術は手段にすぎないこと
遠隔技術は有効でも、信頼関係や制度との整合なくしては成果につながらない。 - 協働こそが基盤であること
行政、企業、地域団体、支援機関が連携して初めて変化が生まれる。
姉妹都市だからこそ進められる協業
姉妹都市の関係は、行政や支援機関との連携を始めやすくし、実証実験を進める上での摩擦を減らす役割を果たします。
人口規模の違いを踏まえながらも、小さな実証から始め、学びを重ねて拡張していくという現実的な進め方が共有されました。
具体的には:
- 既存のネットワークを活用して相互紹介を行う
- 最初の一歩を複雑にしすぎない
- 各地域の現場に即した実証実験を設計する
本セッションは、堺とウェリントンの関係を、本格展開に先立ち検証と学習、適応を進めやすい連携ルートとして位置づけました。
次なるステージへ
今回の交流は、両都市の間で実践的かつ継続的な連携を築く第一歩となりました。弊社は今後も、この対話を現場の取り組みへとつなげ、アジア太平洋地域における具体的な成果創出を後押ししてまいります。



